チェコの温泉豆知識

チェコの温泉豆知識

チェコ温泉の伝統をご紹介 

チェコの温泉豆知識
春の訪れとともに、例えば禁煙あるいは運動量を増やすなど、健康増進の決意を新たにされた方も多いのではないしょうか。とても良いことと思います。同様に、私達の先祖も、健康のために何かしたいと考えていました。そこからチェコの温泉治療滞在の伝統が生まれたのです。当時は大富豪のみに与えられた特権の感がありましたが、今日ではほぼ誰もが利用できるようになっています。温泉はその大半が、空気がきれいで、良質の鉱水、そして散策に最適な美しい自然に恵まれた環境にあります。以下でボヘミア、モラヴィアを代表する温泉をご紹介いたしましょう。

最古の温泉 

チェコ国内最古の温泉は、クルシュネー山地近くに位置する西ボヘミアの町・テプリツェ市内の源泉です。ここでは町の名前そのものが、源泉の存在を示唆しています。テプリツェの名称はチェコ語の「teplý (テプリー)」(温かいの意)に由来しているのです。当地の温泉の歴史は非常に長く、一説ではすでに紀元前後移行期から人々に利用されていたとも言われています。テプリツェの町そのものが成立したのは12世紀で、その後町の修道院が病気・怪我の治癒・治療に温泉を利用し始めました。温泉が治癒、そして休養の場として空前の発展をみせたのは、19世紀のことでした。このときテプリツェも欧州の社交の中心地に仲間入りしましたが、当時この町を訪れた著名人としては、ロシア皇帝アレクサンドル一世、オーストリア皇帝一族、あるいは文化界の巨匠、例えばベートーヴェン、ゲーテなどの名が挙げられます。今日テプリツェは、既にそのピーク期を過ぎていますが、まだまだ温泉町としての機能は果たし続けています。特に運動機能(関節、筋肉等)の故障治癒・回復には、当地の温泉が最適とされています。

チェコで最も新しい温泉 

チェコ最古の温泉をご紹介したからには、最も新しい温泉も知っていただかなければなりません。南モラヴィアレドニツェがこれにあたりますが、当地の療養所が温泉としてのステータスを得たのは2017年のことでした。ここでは治療にヨウ素・臭素を豊富に含む温泉水が利用されていますが、これは運動・循環機能、神経系疾患、あるいは婦人科系疾患、火傷などの治療に効果があるとされています。レドニツェ温泉は新しく、また小規模ですが、これが位置する南モラヴィア地方は古くから一大観光地として知られており、名所旧跡の多さに、どこから見学するか迷うほどです。とりあえずまずはレドニツェ城、およびそのすぐ近くに立つヴァルチツェ城の見学から始められてはいかがでしょうか。

世界的に有名な温泉 

カルロヴィ・ヴァリの名は、恐らく誰もが一度は耳にされたことがあるのではないかと思います。西ボヘミアに位置するこの町は、チェコ国内のみならず世界中で、チェコを代表する温泉町として知られています。そのためチェコで最も有名な温泉と言えます。温泉として成立したのは中世期ですが、その名が世界に知られるようになったのは19世紀に入ってからのことでした。当地の温泉の中心となっているのが、ヴジーデルニー・コロナーダ、および高さ12 mまで吹き出す間欠泉、ヴジードロ源泉です。水温は72度で、国内で最も水温の高い温泉水となっています。ここには合計12の源泉がありますが、いずれも一般的に鉱水が持つ消化器官、運動器官全体への効用を発揮するほか、これを飲むことにより身体組織のデトックスが促進されます。

最古のラドン温泉 

西ボヘミアヤーヒモフ温泉は、1906年にラドン温泉と認定された、世界最古のラドン温泉として知られています。ラドンの治療効果は、2度に渡ってノーベル賞を受賞したマリー・キュリー・クウォドフスカの放射能発見に続いて確認されてものですが、キュリー夫人はここヤーヒモフにも一定期間滞在していました。この自然の恵みは、16世紀に採掘が開始されたヤーヒモフ鉱山に源を発するもので、この鉱山は現在も機能しており、その源水が引き続き温泉利用されています。温泉治療法としては、入浴法が取り入れられており、抗炎症効果、長期的な痛みに対する鎮痛効果をもたらしています。

最も標高の高い温泉 

チェコで最も高いところに位置する温泉は、モラヴィア地方・イェセニーキ山地カルロヴァ・ストゥダーンカという村にあります。ここはビーラー・オパヴァ川の渓谷という自然美に恵まれたところで、その標高は800 mとなっています。山地の大自然に囲まれたこの温泉は、中央ヨーロッパで最も空気がきれいな場所にあることでも知られており、さらにログハウス状の温泉館により山の雰囲気が一段と強調されています。さらに人口250人程度の村に位置することから、この温泉は国内最小の温泉とも言えます。当地の温泉では、自然環境のほか、もちろん鉱水も医療効果を発揮しており、炭酸入浴、鉱泥湿布、インハレーション(吸引)、そして飲水などに利用され、呼吸器疾患治療、腫瘍治療後の養生、高血圧、関節疾患の治療などのコースで効果を発揮しています。

最後に(寒中水浴愛好家向け) 

冬になると、冷たい水でその免疫力を高めようとする、寒中水泳愛好者が世界中で話題になりますが、もし貴方もその一人ということであれば、西ボヘミアマリアーンスケー・ラーズニェを是非お訪ねください。当地の源泉は水温7~10度となっています。規模では国内で2番目に大きな温泉であるマリアーンスケー・ラーズニェは、19世紀初頭に設立されたものです。この町が位置する低地には40もの源泉が湧き出ており、また周辺には更に100ヵ所ほど源泉が見られます。ここでは運動器官、腎臓、呼吸器官の疾患から、代謝異常、婦人系疾患、あるいは消化器官の疾患にいたるまで様々な病気の治療が行われています。